「さえずる宝石」とも呼ばれるシンギングバードは、約200年ほど前にスイスの時計作りの巨匠、ジャケ・ドローによって考案され、今日までその技術が大切に伝えられている伝統工芸品です。
ヨーロッパでも相当な人気があったこのシンギングバードですが、かつては中国の皇帝もこれを愛し、本当の鳥に鳴き方を教えるのに用いたとも言われます。
現在では伝統的な工法でシンギングバードを製作しているのは世界でもスイスのリュージュ社とドイツのシンフォニオン社の2社だけとなってしまいました。
リュージュ社の製品は伝統的な工法に最新のデザインを取り入れたものも多いですが、シンフォニオン社の製品はドイツを発祥とするグリースバームを基礎として、その技術を現代に継承しようと、ドイツ、リューデスハイムで製作されています。ケースデザインも昔のままの製品が多く残されています。
シンフォニオンはジグフリート・ウェンデルという世界的に有名な歴史家であり、自動演奏楽器の専門家、更に自動演奏楽器の博物館を所有する人物の指導のもとに1990年にイェンスとヨルグ・ウェンデル兄弟によって創立されました。 現在、シンフォニオンはドイツ・フランクフルトから西に一時間ほど離れたリューデスハイムに工房を構えています。 1992年に黒い森地域で長年に渡り質の高いシンギングバードやオートマタを製作し世界中に流通していたGreisbaum Company of Triberg(グリースバーム、1905年創業)という会社を取得しました。 ライン川のほとりにある工房では今もシンギングバードや、ホイッスラーの生産を引き継ぎ、グリースバームの伝統的な技工を現代に継承しています。