Understanding the Duo-Art

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今日はエオリアン社のデュオアートについて少し詳しく説明します。

リプロデューシングピアノの醍醐味は演奏者の意図する演奏を再現すること、と以前から記述していました。 どのようにそのような事が可能であるか、構造の説明と歴史について興味深い記事がありますので、そちらを紹介致します。

まずDavid Bowers というアメリカのコレクターが編集した Encyclopedia of Automatic Musical Instrumentという本があります。 日本では「自動演奏楽器の百科事典」と呼ばれる事が多くアンティークオルゴールのコレクターさんは、まず持っているという代物です。英語の本なので少し敷居が高いかもしれませんが写真を見てるだけでも自動演奏楽器の世界の深さに驚かされます。

その本の中の295ページに「Understanding the Duo-Art」という記事があります。専門的な言葉も多く、実際に構造を把握していないとわかりにくい部分もありますが、デュオアートのすごさを感じていただけると思います。翻訳は素人ですので文脈がわかりにくいところなどはご指摘ください。ではどうぞ。


「Understanding the Duo-Art」 -Encyclopedia of Automatic Musical Instrument- p.295 book written by David Bower article written by David L. Saul

 エオリアン・カンパニーのデュオ・アート・ピアノラは正式には1913年に発表された。この機械は後にデュオ・アート・リプロデューシング・ピアノと命名されリプロデューシング・ピアノがポピュラーだった時代には羨望の的になるほどその知名度とマーケティングの地位を確保した。

 デュオ・アートを生みだし製造を行った会社は大きく、そして活動的であった。ニューヨークに本社を置いていたので国境をを超えた活動を行い、世界に目を置いた商法を行った。ロンドン、パリ、マドリッド、そしてメルボルンにショールームを置き国際的にデュオ・アートを販売した。レコーディング・スタジオもロンドンとニューヨークに設けられロールの生産も両方で行われた。

 デュオ・アートはスタインウェイを始めとしエオリアン・カンパニーの自社製作のピアノも使われた例えばウェーバー、ステック、ウィーロック、ストラウド、エオリアン(Weber, Steck, Wheelock, Stroud, and Aeolian)などが著名である。サイズも多様でベビー・グランドから小型のスタジオ・アップライトまで、大型のものになるとスタインウェイやウェーバーのコンサート・グランドで長さ2m70cm(9ft)に及ぶものもあった。ケースもいろいろな装飾に合うように作られた。派手な装飾を施されたものは普通特注扱いになり何ヵ月も前から発注され、値段も高価であった。結果、最も普及していたデュオ・アートはスタイルもケースも割に地味なタイプのものが多かった。

 『エオリアン』か『デュオ・アート』の名前は目立ちやすいところに入っていることからデュオ・アートは比較的簡単に認識できる。何らかの理由でそれらの名前が確認できないとしても、トラッカーバーの両端に縦長の穴を4つづつ確認できればよい。これらの8つの穴は、通常使用の穴の上に位置している。この少し目立つポートは特別なデュオ・アート機能のコードを読み取りの穴である。

 デュオ・アート・グランドはピアノケースの鍵盤の上にスプールボックスが仕込まれている。例外として、後期に作られたデュオ・アートの中に引き出し式に仕込まれたものもあった。ビルトインタイプのスプールボックスを収納するためには基本的にピアノの長さを12.5cm(6インチ)延長する必要があった。

 初期に製作されたデュオ・アートの中には電動のバキュームポンプをピアノとは別のキャビネットに収納するタイプもあった、これは当時のポンプがピアノケースの中に収納するには大きすぎるからだった。しかし、デュオ・アートだけがこの問題に取り組んでいた訳ではなかった、実際にウェルテ・ミニョンが先行して確立していた。この形状は製造コストもかかる上にあまり実用的ではなかったため、小型のポンプが開発されるとすぐに姿を消した。

 足踏みポンプのデュオ・アートもアップライトとグランドの両タイプで生産された。これらのタイプは通常の半分のデュオ・アート機能しか持合わせておらず、残りの表現手段は演奏者の音楽的才能にかかっていた。ほとんどのデュオ・アートは電動で完全なデュオ・アート機能を備えていた。

 デュオ・アートが他のリプロデューサーと本質的に違うのは主旋律(theme)と伴奏(accompaniment)の表現機能が分かれていることである。メロディー等は音楽的に他の音より優勢なため強く演奏するのが常識である。表現機能のコントロールの面から考えるとそのような音は主旋律に置き換える。メロディーとは違うその他の音はあまり強調される必要のない音は伴奏の範疇に置き換えられる。デュオ・アートの表現機能のレギュレーターは同時に2つの演奏の力又はレベルを供給する;1つは強く、もう一つは弱く。それらは主旋律と伴奏に振り分けられる。双方のレベルはロールから受ける表現コードによって自動的に変化する、そしてそれは演奏家がロールに録音した時と同様の演奏を機能的に変換し穿孔したものである。16階調(又は度)のとても弱くから比較的強くまでを伴奏に使う。そして別のスケールから供給される16階 調を主旋律に使う。(少し強いレベルで制御されるのだが、例えば主旋律のふいごが4/16インチ縮むと、伴奏のふいごは5/16インチ縮まないと同じレベルの音が再現できない。)

デュオ・アートの伴奏機能は主旋律が演奏される瞬間以外は、通常最も強い音をコントロールする。主旋律が曲の中に現れると切り替え機能の『オーバーライド』という機能が働き伴奏に主旋律の力が加わる、これが音の強さを急増させて必要とされたアクセントを引き起こす。主旋律の機能は非常に素速く1対の小さな穴(見た目が蛇に噛まれた後のようなので『スネークバイト』と呼ばれている)によって制御される。これはトラッカーバーの特別なポートを通り速やかに主旋律にパワーを供給する。

 歴史的に見てデュオ・アートの機械は1900年J.W.クルックスによって発明されたエオリアンのThemodistを基本として発展したものである。Themodistのパワー制御の基本型は2つの固定型か手動操作のパワーレベルのみであった。Themodistは選択された音にアクセントを付けるように『スネークバイト』方式を採用していたが、その他の自動表現手段はなかった。更に洗練されたデュオ・アートのリプロデューシング機構に置いては演奏者の技術を忠実に再現するべく主旋律と伴奏の制御が自動的に行えた。デュオ・アートは通常デュオ・アート専用のロールだけでなくThemodistのロールや普通のプレイヤーピアノ用のロールも使用できる装備が施されていた。しかしリプロデューシング機能をフルに活用するためにはデュオ・アート専用のロールが必要であった。

 生産終了の間際までデュオ・アートの機械は初期の形とデザインを本質的には保持した。時間の経過と共にいくつかの改良が施されたが、基本デザインと表現機能は変更されることがなかった。その結果、全てのデュオ・アートロールは全てのデュオ・アートピアノと完全に互換性がある。したがってエオリアン社製品の特徴として、2つのライバル会社アンピコとウェルテが成し遂げられなかった、統一性があげられる。

 1932年7月31日、ライバル製品アンピコの製造元だったアメリカン・ピアノ・カンパニーとの合併が公式発表された。再編成されたエオリアン・アメリカン・カンパニーによって両タイプのピアノの生産が続けられた。しかし大恐慌よって国の景気が著しくダメージを受けたためピアノの生産も必然的に縮小されるに至る。

 限られた規模だったが技術的な向上努力は続けられた、そして1935年にはグランドピアノに使用するためのデュオ・アート機構のフルモデルチェンジ仕様が発表された。新システムは長年使用され続けたビルトイン・スプールボックスタイプではなく引き出し仕様に変更された。 新しいデュオ・アートの引き出し方式はアンピコのモデルBからの改作だった。両者はトラッカーバーを除いてまったく同じものである。デュオ・アートの表現機能も変更され、現在コレクターの間で『ファン・タイプ』と呼ばれるユニットになった。アコーディオン・ニューマチックのデザインが変更されファンの様な形になったところからこの名前が付いた。アコーディオン・ニューマチックと呼ばれる機能はデュオ・アート表現機構独特のものであり、新型デュオ・アートのニューマチック機構はアルミをその構造に使用した。この後期に発表された引き出しタイプのデュオ・アートは少量しか生産されず、その結果今日では大変レアな逸品として扱われる。

 1930年以降デュオ・アート機能のカスタム・インストールを行うようになる。それらの精巧な機械はピアノ本体とは別に設置された。専用の家具調ケースに納められたコンチェルトラ・ユニットは、オートチェンジャー機能を有し1時間以上の連続演奏が可能だった。精巧にそして優雅に作られたコンチェルトラはそのアレンジに『フェリス・ホイール』調を採用し、外見はフップフェルトやフィリップ、ワーリッツァー等のコイン使用のピアノやオーケストラのオートチェンジゃーのそれとよく似ていた。コンチェルトラは10本のロールを収納することができた。そして、押しボタン式の小さなリモートコントロールによってロールを順番に演奏することも、1本づつ演奏することもできた。又巧妙な機構によってロール毎のテンポを調整した。(テンポ調整用の穴がこのためにロールにあけられた)  コンチェルトラの製品ライン全てが特別な『ロングレコーディング』演奏用ユニットとエオリアン・パイプオルガンの演奏ユニットを含んでいた。(しかしその『ロングレコーディング』が量産されることはなかった)

 実際のところデュオ・アートの内蔵機器、チューブ配置、そしてバルブやニューマチック・スタックのデザインに関するバリエーションは多数存在する。


どうでしたでしょうか。リプロデューシングピアノ聞いてみたくなりましたか。

榎屋のショールームに1924年製のSteinway & sonsのグランドピアノにデュオアート組み込んだリプロデューシングピアノを展示しています。興味のある方はご連絡ください。

 榎屋の場所

しばらく、リプロデューシングピアノについての話題が続きましたので、次回は違うジャンルの自動演奏楽器について掲載予定!